思春期のさまざま

思春期には様々な問題が起きてきます。もちろん体の問題が多いのですが・・肥満、やせ、身長、月経、性の問題など・・こころや行動の問題も少なくありません。平成6年から16年まで11年間にわたって戸田市民を対象として無料でこころの問題を中心とした思春期相談を行なっていました。11年間で1000人を超える子どもたちがやってきました。最初は不登校の子どもたちが主でした。そのうちに非行、若年妊娠、リストカットなどの問題や、摂食障害を抱える子どもたちが多く来られるようになりました。最近では高機能自閉症やADHDを中心とした発達障害の子どもたちが外来診療に来ています。自分自身が思春期であった時代から50年もたつと、なかなか子どもたちについていけない場合もありますが、一緒に考え、一緒に汗をかき、一緒に悩むというスタンスでこれからも出来ることをしてゆこうと考えています。

思春期の発達障害を抱えた子どもたちへの対応、性の問題を抱える子どもたちへの対応、いろいろなことをしてきました。それらをまとめて2019年11月に「発達障害:思春期からのライフスキル(左)」を岩波書店から出しました。

思春期のいろいろ

思春期には・・

思春期は英語ではadolescenceと表現されることが多く、これはギリシャ神話の美少年アドニスに因んでいます。年齢はわが国では10〜18歳ころとすることが多いようですが、国際的には10〜21歳ころを指すことが多くなっています。

思春期には不登校や摂食障害、家庭内暴力や少年犯罪、いじめや行動の障害などをはじめとして心理的要因の介在する問題がしばしば認められることは古くから知られていますが、わが国でのいままでの対応は十分ではありませんでした。これら思春期を巡る問題は、しばしばマスコミなどで取り上げられ、青少年の関与する事件が起こったり、不登校についての統計が明らかにされたりするたびに世間の話題となりますが、一貫性のある対応が進展したとは言えない状況でした。

保健という面から考えてみると、ライフサイクルに沿った保健は元来一元的に管理するべきものですが、思春期は学校保健という形で文部科学省の範囲に入り、一般的な母子保健を管轄する厚生労働省の範囲ではありません。保健におけるこの2層構造がわが国における思春期保健の社会資源の育成を阻んできました。すなわち一般的に保健を担当している保健所や市町村の保健センターは、厚生労働省の管轄とされるため、思春期に対応する適切な人材育成や事業の設定を行ってきませんでしたし、厚生労働省においてもエンゼルプランまでは思春期を取り上げていませんでした。

最近のすこやか親子21では現状に鑑み4本の柱の一つに思春期を加えましたが、具体的な思春期保健の推進方法についてはまだ模索の状態です。医学の面でもわが国では国際的な流れとは異なり、小児科と内科の境界がおおむね15歳とされ、小学生から高校生にいたる思春期を通してみるという対応はされておらず、日本思春期学会などでは対応の必要性を古くから叫んではきたものの思春期を通して対応する診療体制はほとんど整っていません。


思春期の問題と対応

思春期の問題への対応は柔軟性とともにしばしば迅速性が求められます。たとえば若年妊娠では、気づいたときには週数が進んでおり、出産か妊娠中絶かを選択する時間が少ないことがよくありますし、自殺企図や希死念慮には即時に対応することが求められます。

また相談に時間がかかることも思春期の特徴であり、たとえ本人が面接にやってきたとしても初めから積極的に話すことはほとんどなく、時間をかけながら少しずつ話すのを待つことになります。不登校やひきこもりの相談では本人が最初から来ることはまれであり、家族との話から始まり、家庭訪問などでようやく本人と話し始めることも少なくありません。

一方、心理的な主訴であっても身体的な疾患が原因であることも少なくないので、ただ相談に乗ればいいというものではなく、状況によっては医学的チェックも欠かせません。

しかし思春期の子どもたちへの医療はなかなか届きません。それは子どもたち自身が医療機関受診に対するためらいが強いこともありますし、また医療機関の方も思春期の子どもたちへの対応に慣れているとは言えなかったこともあります。

そうした現状を受けて簡単なアンケートを受診の時に行って、それを見ながら話をする(手順がある程度決まってくるので再現性が高くなります)方法を考え、2019年の夏に各地の小児科医に協力してもらってデータを集めました。まとめたものは現在投稿中ですが、また結果が出たらお知らせしたいと思います。