思春期には・・
思春期は英語ではadolescenceと表現されることが多く、これはギリシャ神話の美少年アドニスに因んでいます。年齢はわが国では10〜18歳ころとすることが多いようですが、国際的には10〜21歳ころを指すことが多くなっています。
思春期には不登校や摂食障害、家庭内暴力や少年犯罪、いじめや行動の障害などをはじめとして心理的要因の介在する問題がしばしば認められることは古くから知られていますが、わが国でのいままでの対応は十分ではありませんでした。これら思春期を巡る問題は、しばしばマスコミなどで取り上げられ、青少年の関与する事件が起こったり、不登校についての統計が明らかにされたりするたびに世間の話題となりますが、一貫性のある対応が進展したとは言えない状況でした。
保健という面から考えてみると、ライフサイクルに沿った保健は元来一元的に管理するべきものですが、思春期は学校保健という形で文部科学省の範囲に入り、一般的な母子保健を管轄する厚生労働省の範囲ではありません。保健におけるこの2層構造がわが国における思春期保健の社会資源の育成を阻んできました。すなわち一般的に保健を担当している保健所や市町村の保健センターは、厚生労働省の管轄とされるため、思春期に対応する適切な人材育成や事業の設定を行ってきませんでしたし、厚生労働省においてもエンゼルプランまでは思春期を取り上げていませんでした。
最近のすこやか親子21では現状に鑑み4本の柱の一つに思春期を加えましたが、具体的な思春期保健の推進方法についてはまだ模索の状態です。医学の面でもわが国では国際的な流れとは異なり、小児科と内科の境界がおおむね15歳とされ、小学生から高校生にいたる思春期を通してみるという対応はされておらず、日本思春期学会などでは対応の必要性を古くから叫んではきたものの思春期を通して対応する診療体制はほとんど整っていません。
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